Home / ファンタジー / 竜と鬼姫の末裔 / 第二章 戦いの後に

Share

第二章 戦いの後に

Author: アイリア
last update publish date: 2026-06-25 15:16:50

戦闘はすぐに終わった。だが周りにはたくさんの負傷者がいたそれに見かねた私は、ヴィゴーレ様に、

「全員に回復魔法をかけてもいいですか?」

と聞いてみた。

「お前、回復魔法もつかえるのか?まあ、別に構わんが。」

耳元で囁くように続けて言う

「あまり、力は露見させない方がいいぞ。これは忠告だ。力の使い方には気を付けた方がいい」

ちょっときつい言い方で言ってきた。けれども、頭をくしゃくしゃに撫でられた

「だがその人を思いやる心は素晴らしい。思いやりすぎて、自分の命を無駄にしないようにな。」

と豪快に笑いながら言っていた。すると、不意に馬車のドアが開かれ、侍女に連れられて、二人の少女が下りてきた。

一人は、私と同じぐらいの身長だろうか、薄い銀色の髪をした、可愛い女の子だった。

もう一人は、私より少し身長が高く、凛とした姿の桃色の髪をした、言うなれば絶世の美少女である。しかも何というか、すごい偉そうな服を着ている。

「テネレッツァ、頭を下げな。王の御前だ。」

「えっ」と思いながらも、ヴィゴーレ様に倣って頭を下げた。

「よいよい、頭を上げてくれ。おぬしらは妾の命の恩人なのだからな。」

「御冗談を。あんな魔物、クロノア様であれば一人で倒せたでしょうに。」

(え、ヴィゴーレ様、この国の王様とお知り合いなの?)

心の中で、そんなことを考えていると横から、

「先ほどは、有難うございました。ヴィゴーレ様がいなければ、どうなっていたことか。」「いえいえ、アリューシア公爵令嬢もご無事で何よりです。」

全く話についていけない私に

「テネレッツァ、こちらはクロノア・ローズ・テンペンシア女王陛下、そしてその隣におられるのがアリューシア・ルーズ・サンタリア公爵令嬢だ。」

開いた口が塞がらないとは、まさにこのことなんてたって王国の最上位貴族と王族が目の前にいるのだから。

さらに、私は貴族階級について何もわからなかった。

「公爵って?」

「公爵ってのは、王族を除く貴族階級の中で一番位が高い貴族のことだ。」

「へ?」

まだ、開いた口が塞がらないでいると、

「クロノア様とアリューシア様は何故このような場所に?」

「私がお忍びで、アリューシアの父の治める領に遊びに行っておったのじゃよ。」

「そして、旅程が終わって王都に戻ろうとしたらあのような事態に。」

クロノア様はともかく、アリューシア公爵令嬢はまだ怖がっているらしく、手が震えていた。無理もない。12歳くらいの少女がいきなりあんな血濡れた戦いを見てしまったのだから。私はそこで、

「あのー、失礼でなければ気分鎮静化リラックスの魔法をかけてもよろしいでしょうか。」

三人の視線が一気にこっちに向いた。やめてください。はずかしいです。

「私は別に構わんと思うが、本人がよい言うものか。」

そう言ってアリューシア公爵令嬢の様子を伺うヴィゴーレ。

「よろしいですけど、変な魔法かけないでくださいね。」

上目遣いでそう言うアリューシア公爵令嬢に

「大丈夫ですよ。では「リラクッス」」

唱えると同時に、アリューシア公爵令嬢の体が光に包まれて、終わったときには手の震えも止まっていた。だけど

「アリューシア様!」

緊張が解けてしまったのか、疲れて眠ってしまった。

「この子は私が馬車で連れて帰るとしよう。」

「では、我々もご一緒いたします。」

王都までの道のりは特に何事もなかったが、なぜか、「馬車に一緒に乗ってくれ」と言われ、ヴィゴーレ様は二つ返事で了承したけれど、私にはとても気まずい時間だった。

「では、私たちはここで。またどこでお会いしましょう。」

「うむ」

クロノア様たちは王城へ私たちはギルドへ向かった。

「おーい、カレラ。依頼の完了手続きを頼む。」

「はいはい、ちゃんとできたの?」

「もちろん、薬草と毒消し草、あと上薬草が何個かあったから、取ってきたぞ。あ、これを受けたのはテネレッツァだから、あいつの名前で頼む。」

なんか知らないけど、依頼の完了手続きが終わってしまった。

「ほら、今日の依頼料だ。」

そう言って渡されたのは、銀貨が一枚と銅貨が三枚だった。

「まあ、初日の成果としては、いいだろ。この調子で明日も頑張ろうな。」

「はい!それではおやすみなさい。」

そう言って家に帰っていくテネレッツァを、後ろから眺めていた。

「明日から、退屈しない毎日になりそうだ。」

微笑みながら、そういった。

「ただいまー」

「おかえりなさい。どうだった?」

「初日から、いろんなことがあった。」

「まあ、食事の時に話を聞くから、手を洗ってきな。」

「はーい」

(そろそろ、頃合いだろうか。)

ヴェリミーアの手には一冊のノートを持っていた。

食事の時、テネレッツァはいろんな話をした。

相方がsssランク冒険者になったとか、女王陛下に会ったとか、とても初日とは思えないような話だった。

(そうか、あいつとも出会ったか。ならもういいだろう。)

「なあ、テネレッツァ。ちょっと大事な話があるんだ。きちんと聞いてくれるかい?」

いつになく真剣な表情の母さんに私も真面目に聞いた。

「私は少し家を出る。その間、お前は一人で過ごすことができるか?」

「えっ、どういうこと?」

「そのままの意味だ。私は旅に出る、というか行かなければならない場所がある。」

「わかりました。母さんがいない間、一人で頑張ります。」

「あんたの相方のヴィゴーレとやらに明日合わせてくれないか?話しておきたいこともあるしな」

そんな話をしながら、テネレッツァと母さんの最後の夜が更けていった。

Continue to read this book for free
Scan code to download App

Latest chapter

  • 竜と鬼姫の末裔   第三章 新たな日常の始まり

    「さあ行こうか、冒険者ギルドに。」二人で、ギルドまでの道のりを歩く。普段と変わらない道のりなのに、なんだか寂しい気持ちになる。ギルドにつくと、ヴィゴーレ様はもう来ていて依頼掲示板を見ていた。こちらに気づいたらしく「おはよう、テネレッツァ。今日は誰か連れてきたのかい?」「はい、うちの母さんです。母さんがヴィゴーレ様に話があるらしくて」「初めまして。テネレッツァの母です。」「こちらこそ、ヴィゴーレだ、よろしく。話があるそうだな。」「はい、できれば二人で話したいのですが。」ヴィゴーレは少し考えた。(二人で話すのは構わないが、テネレッツァを一人にすると前みたいに絡まれるかもしれない、どうしたもんか)「召喚。エルバフィーア」赤ちゃんくらいの大きさの緑と薄い肌色をした猫のような魔物が出てきた。私は、目を輝かせて「なんですか。この可愛い動物は。抱っこしてもいいですか?」「抱っこしててもいいから、少し二人で待っておけるかい?」「わかりました。」(ん?二人?)遠目から見ると微笑ましい光景が目に入った。テネレッツァがエルバフィーアをものすごくかわいがっている。見ているこっちが癒されそうだ。「おっと、では本題に入ろうか。テネレッツァのお母様いやヴェリミーア様?」「やっぱり、気づいていましたか。」「話したいことというのは、そのノートのことかい?」「はい、このノートを来たるべき時が来たときあの子に渡してください。それと、これから私の代わりとしてあの子を、テネレッツァを支えてください。」いつになく、丁寧に話をするヴェリミーアは、覚悟を決めたような顔つきをしていた。「あんたなら、大丈夫だろ。あそこに行くんだろ?せいぜい気を付けていくんだな。」二人の話が終わって再びテネレッツァのところに行くと案の定また絡まれていた。だが、今回は違う。緑色の長髪で身長の高い女性がテネレッツァをかばっていた。「そこをどけって言ってんだよ。てめぇみたいな女に興味はねぇ。そこのクソガキに用があんだよ。」あいつはこの前も絡んできたガンドラとかいうやつだっけ。まあ、あいついるし大丈夫だろ、とか思っていると「あなたたちに用はないそうですよ。とっととお引き取りください。筋肉バカさん?」「てめぇ、いい度胸だな。おめえから教育してやんよ!」ガンドラの拳が女性に届きそう

  • 竜と鬼姫の末裔   第二章 戦いの後に

    戦闘はすぐに終わった。だが周りにはたくさんの負傷者がいたそれに見かねた私は、ヴィゴーレ様に、「全員に回復魔法をかけてもいいですか?」と聞いてみた。「お前、回復魔法もつかえるのか?まあ、別に構わんが。」耳元で囁くように続けて言う「あまり、力は露見させない方がいいぞ。これは忠告だ。力の使い方には気を付けた方がいい」ちょっときつい言い方で言ってきた。けれども、頭をくしゃくしゃに撫でられた「だがその人を思いやる心は素晴らしい。思いやりすぎて、自分の命を無駄にしないようにな。」と豪快に笑いながら言っていた。すると、不意に馬車のドアが開かれ、侍女に連れられて、二人の少女が下りてきた。一人は、私と同じぐらいの身長だろうか、薄い銀色の髪をした、可愛い女の子だった。もう一人は、私より少し身長が高く、凛とした姿の桃色の髪をした、言うなれば絶世の美少女である。しかも何というか、すごい偉そうな服を着ている。「テネレッツァ、頭を下げな。王の御前だ。」「えっ」と思いながらも、ヴィゴーレ様に倣って頭を下げた。「よいよい、頭を上げてくれ。おぬしらは妾の命の恩人なのだからな。」「御冗談を。あんな魔物、クロノア様であれば一人で倒せたでしょうに。」(え、ヴィゴーレ様、この国の王様とお知り合いなの?)心の中で、そんなことを考えていると横から、「先ほどは、有難うございました。ヴィゴーレ様がいなければ、どうなっていたことか。」「いえいえ、アリューシア公爵令嬢もご無事で何よりです。」全く話についていけない私に「テネレッツァ、こちらはクロノア・ローズ・テンペンシア女王陛下、そしてその隣におられるのがアリューシア・ルーズ・サンタリア公爵令嬢だ。」開いた口が塞がらないとは、まさにこのことなんてたって王国の最上位貴族と王族が目の前にいるのだから。さらに、私は貴族階級について何もわからなかった。「公爵って?」「公爵ってのは、王族を除く貴族階級の中で一番位が高い貴族のことだ。」「へ?」まだ、開いた口が塞がらないでいると、「クロノア様とアリューシア様は何故このような場所に?」「私がお忍びで、アリューシアの父の治める領に遊びに行っておったのじゃよ。」「そして、旅程が終わって王都に戻ろうとしたらあのような事態に。」クロノア様はともかく、アリューシア公爵令嬢はまだ怖がって

  • 竜と鬼姫の末裔   第一章 出会い

    「おーい、朝だよー。」そんな元気な声でテネレッツァは目を覚ました。今年で12歳となる少し目が細めのショート髪の女の子のテネレッツァは朝からとてもそわそわしている。「こらこら、そんな早く食べないの、のどに詰まっちゃうでしょ。はい水を飲む。」「ごめんなさい母さん、今日から冒険者になれると思ったら我慢できなくて」そう、この国「テンペンシア連邦国」では12歳から、冒険者になったり、職に就いたりすることができる。また、学校は14歳から行くこともできる「行ってきます!」そんな元気な声で言いながらテネレッツァは、冒険者組合である王都冒険者ギルドに行った。冒険者ギルドは王都の入り口近くにある。どうやら、大きな魔物や魔獣を狩ってきたときに、運びやすいように、とゆうことだそうだ。冒険者ギルドに着き、扉をあけてみると、中には朝だからなのか、大勢の冒険者がいた。奥にあるカウンターの中で、一番空いていそうなところに並んでいると、後ろから絡まれた。「どけよ!ガキが。邪魔なんだよ。」そう言ってきたのは、朝っぱらから、酒を飲んでいそうなガタイだけいい男だった。ただし、酒臭い。「すいません。私並んでいるんですけど。」いきなり順番抜かしをしてくるのにイラっときて言い返すと、冒険者は、「ああ? ガキ風情がⅭランク冒険者であるこのガンドラ様に意見するのか? てめぇいい度胸してんな。 そんなクソガキは俺が教育してやるよ!」そう言ってきた男は、キレ気味になりながら拳を振り上げてきた。テネレッツァに当たる瞬間、一人の女性がその男の拳を片手で軽々と止めた。その女性は、不機嫌な顔をしながら、「Ⅽランク冒険者が、冒険者登録もしていない子供に絡むのかい? 感心しないねぇ」と言いながらテネレッツァと冒険者の間に立った。「誰だてめぇ? 俺に喧嘩うんのか?」そう言いながら近づいていこうとすると取り巻きの一人が「そいつはやべぇです。sssランク冒険者のヴィゴーレです!」そう言い、ガンドラを止めようとした。「なに⁈ こんな奴がsssランクだと?」ヴィゴーレは不機嫌そうに言う。「そういうことだ。喧嘩売るってんなら買ってやるが?」ガンドラ達は、後ずさりしながら、「覚えていろよ!」と周りを威嚇するように出ていった。「ふう、危なかったねぇ、大丈夫だったかい?」テネ

More Chapters
Explore and read good novels for free
Free access to a vast number of good novels on GoodNovel app. Download the books you like and read anywhere & anytime.
Read books for free on the app
SCAN CODE TO READ ON APP
DMCA.com Protection Status